ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「俺、前にも言ったろ。杉本さんのこと、なんとも思ってないよ」
「でも、……大人っぽいし、キレイだし、セクシーだし……」
指折り杉本さんのことを褒める愛花は、言いながら自分と比べているようだった。
……比べる必要なんてないのに。
お前のいいところは、もっと他にあるんだから。
もっと子供っぽくていいと思うくらいしっかりしていて、大人びた中身に心配になるし。
強くいようとする姿勢が、放っとけない。
それなのに、年相応の無邪気な笑顔は、可愛くてたまらない。
セクシーさは、まあ、……。
なんて、言えっこないけど。
俺だって自分で、不思議でたまらないんだ。
年の離れたお前に、こんな気持ちを抱くなんて思ってもいなかった。
単なる子供だと思ってたのに……俺は誰でもないお前に、欲情するんだから。
「……あのさ」
ベンチから立ち上がり、愛花の前に向き合うようにしてかがんだ。