ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
覗き込むように、見上げるように愛花をしっかりと見つめた。
「俺はさ、……ほんとにお前のことが、大事なんだよ」
ありったけの想いを声に乗せたつもりだった。
今は、お前が求めている言葉をあげることはできないけど、どうか、俺の気持ちが伝わって欲しい。
大事だから、無責任なことをしたくないんだ。
泣き疲れたような愛花のまぶたを、そっとなぞる。
「わたしも、おーちゃんのこと、大事だよ」
「ん。知ってる」
「おーちゃんが、好き」
「……うん」
——俺も、好きだよ。
夢の中では告げることができたその言葉を、ぐっと飲み込んだ。