ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「知ってたの?」
すがるような目を向けられて、苦しさに眉をひそめる。
たまらず、華奢な体を抱きしめた。
「知ってたけど……お前をこんな風に追い詰めてるとは、思わなかった。ごめんな」
自分の気持ちをコントロールすることに精一杯で、愛花の気持ちを考えてやれなかった。
「もう、妹なんて言わないから」
これからは、俺がもっと我慢をすればいい話だ。
少し自信はないけれど、こんな風に、偽りの言葉で愛花を傷つけ続けることはできない。
「……ほんと?」
「ほんと」
「わたしのこと……女の子として見てくれる?」
……。
あんま、可愛いこと言うなってば……。
「見てくれないの?」
「わかった、って」
……お願いされなくたって、もうそういう目で見てるんだけど。
「……考える」
俺は観念して、そう言った。