ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
なにかを考えるように目を瞑っていた愛花が、意を決したようにぱちりと目を開ける。
「わたし、証拠がほしい」
「……証拠?」
……なんの。
わけもわからず、愛花をまじまじと見下ろした。
「おーちゃんが、ちゃんとわたしを女の子として見てくれるっていう、証」
大きな黒い瞳があどけなさを感じさせる愛花の顔が、俺を見上げた。
その距離の近さに、情けないことに俺の心臓は跳ねまくっていた。
次に続けられる言葉を予感しているように、全身がざわざわと落ち着きをなくしている。
愛花の紅い唇が、薄く開いた。