ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

震える声で名前を呼ばれて、俺は思わず喜びを頬に浮かべてしまった。

まるで「もっと」とねだられているような感覚に陥って、俺は吸い寄せられるように、もう一度唇を近づけた。

ベンチから手を離し、愛花の頭を支えるように手を回す。


……証が欲しいなら、刻み込んでやるよ。

なにも不安がる必要なんて、ないんだってこと。

俺がお前しか見えていないってことを、……わからせてやる。


「……ん……っ」


愛花から漏れる甘い吐息が、俺をあたたかな波に揺られているような心地にさせる。

舌を差し込むと、愛花が身を引こうとしたのがわかった。


——逃さない。