ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



風呂から上がり、支度を済ませて、寝室へと向かう。

その途中で、なにやら俺のベッドの上でジタバタしている愛花を見つけた。

嬉しさを体全体で表現している様子に、たまらずこっそりと吹き出した。


……なんだよ、それ。


可愛いにもほどがあるだろ。

ひとり静かに肩を揺らしていると、ベッドの上の愛花と目が合ってしまった。


……あ。

見てたの、バレた。


ピタリと動きが停止して、こちらに向けられた顔は、面白いくらいにどんんどん紅潮していく。

ぎこちなく体を起こす愛花に、俺は笑いながら近づいた。


「お前ってほんと、わかりやすい」


なあ、愛花。

そんなに嬉しかったのか。

……俺に、触れられることがさ。


自分の手が、愛花をここまで喜ばせることができることに、幸福感が腹の底からせり上がってくる。


……触れるだけなら、大丈夫だよな。


目の前の頭に、そっと手を乗せた。
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