ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
13.揺さぶられる心 side旺太
たまたま鞄のポケットからはみ出ていたそれが目に入って、なんとなしに手に取った。
体育祭のプログラムだとわかって、開催日の部分の文字を追う。
「体育祭、来月なんだな」
洗い物をしてくれている愛花に聞こえるように、少し大きな声で言った。
「そうなの。おーちゃん、その日——」
そこまでいいかけて、愛花は、あ、となにかに気がついた。
おそらく、先に俺の答えがわかってしまったのだろう。
書かれている日付は、平日だった。
「仕事だよね」
「残念ながら」
プログラムを眺めながら、俺は肩をすくめた。
愛花が中学のころは、大学の講義を抜け出して見に行ってたけど……。
去年は結花のこともあって、それどころじゃなかったからな。
「体育着姿のお前、見たかったな」
そう呟くと、返ってきたのは、沈黙だった。
不思議に思ってキッチンに目を向けると、なにやら愛花が苦い顔をしていた。
「……え、なに。その反応」
「だって、なんか……変態っぽくてやだ」