ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
15.通じた想い
「お前を、好きだ」
降ってきたのは、わたしがずっとずっと欲しかった言葉だった。
……おーちゃんの表情がよく見えない。
瞬きをすると、また、ぽろりと涙がこめかみを伝う。
はっきりとなった視界で、弾んだ息を整えながら見上げると、おーちゃんが切なげに目を細めた。
——今、のは……。
まるで、時間の流れがゆっくりになったみたいだ。
幻聴じゃ、ないよね……?
今……おーちゃんは、なんて言ったの?
確かめたいのに、聞き返すことさえも怖くて、わたしは何も言えなかった。
お互いに見つめあったまま、しばらく動けずにいて……。
先に言葉を発したのは、おーちゃんのほうだった。