ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「すき……」
「……うん。俺も、好き」
「……うそ……」
「嘘じゃないよ」
「だって……」
「本当だよ」
おーちゃんはそう言うと、もう一度わたしにキスをした。
わたしの頬に添えられた手が、背中に回る手が……、熱くて熱くて、のぼせそうだ。
深く触れ合う唇のふわふわした感触が、頭にまで伝染する。
「……ほら、わかっただろ」
至近距離で、おーちゃんは掠れた声を出して——、
「お前を好きだから、こんなことするんだよ」
わたしの大好きな、笑顔を見せた。
……どうしよう。
すごく嬉しくて、幸せだ。
信じられなくて……夢みたいで。
わたしはおーちゃんの存在を確かめたくて、その大きな背中に、両腕を回した。