ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
……それって、……。
康晴が——。
驚きとショックとで、言葉を失ってしまう。
ただ、自分では確認できないその痕を、おーちゃんには見られたくない、と強く思った。
「愛花」
「や。見ないで……」
首元を押さえているわたしの手に、おーちゃんが触れる。
「大丈夫だから」
優しく退かされてしまい、わたしはぎゅっと目を瞑るしかなかった。
肩にかかっている髪も払われて、隠したい場所を、露わにされてしまう。
スースーとする首元に、突然、おーちゃんの息遣いを感じて——。
「ん……」
肌に触れた柔らかい何かに、ピクリと体が跳ねる。
首元にキスをされているのだとわかったとき、触れている部分から、おーちゃんの体温が全身に広がっていくようだった。
感覚が集中しているそこに、前にも感じた小さな痛みが走る。
やがて、しっとりとした感触が離れていってから、わたしはこっそりと目を開けた。