ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
チラリと横目で見られれば、なんだかわたしまで緊張してしまう。
「もう覚えてない」
「あ、ズルいっ」
「そうじゃなくて。……はっきりわかんないんだよ」
ボソボソと答えるおーちゃんの耳は、ほんのり赤く染まっていた。
「でも、お前が中学を卒業するころにはもう、……妹みたいなんて、思えなかったかな」
「……」
「おい、……黙るなよ。お前が教えろって言ったんだろ」
「だ、だって」
そんなに、前から……。
すごく予想外の答えが返ってきたものだから、びっくりした。
どうしよう。
嬉しすぎてニヤけちゃうよ。
「笑いすぎ」
こつんとおでこを突かれる。
さらに顔を緩ませてみれば、おーちゃんは不服そうにまたそっぽを向いた。