ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


チラリと横目で見られれば、なんだかわたしまで緊張してしまう。


「もう覚えてない」

「あ、ズルいっ」

「そうじゃなくて。……はっきりわかんないんだよ」


ボソボソと答えるおーちゃんの耳は、ほんのり赤く染まっていた。


「でも、お前が中学を卒業するころにはもう、……妹みたいなんて、思えなかったかな」

「……」

「おい、……黙るなよ。お前が教えろって言ったんだろ」

「だ、だって」


そんなに、前から……。


すごく予想外の答えが返ってきたものだから、びっくりした。


どうしよう。

嬉しすぎてニヤけちゃうよ。


「笑いすぎ」


こつんとおでこを突かれる。

さらに顔を緩ませてみれば、おーちゃんは不服そうにまたそっぽを向いた。

< 294 / 405 >

この作品をシェア

pagetop