ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「じゃあ、おーちゃんはもっと笑っていいよ」
「なんでだよ」
「……わたしのほうは、それよりもっと前から好きだったんだもん」
付け足すと、おーちゃんからは大きなため息が返ってきた。
とうとう額に手を当てて項垂れてしまっていた。
そして、そのままわたしのほうへ、こてん、と力なく寄りかかってくる。
「……可愛い」
肩にかかる重さと一緒に落とされた、小さな呟き。
ずっと弾んだままのわたしの胸が、さらに動きの激しさを増していった。
……ドキドキしすぎて、破裂しちゃいそうだ。
だけど……。
明日からは、きっとわたしたちは、元通りになる。
だから今だけ……。
壊れちゃってもいいって思うくらい——もっと、この想いに、溺れていたい。