ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……手を繋ぐくらいなら、家族だってするよね……?」
顔の半分まで布団をかぶって、遠慮がちに伺った。
要は、まだ恋人同士の関係になれない、というだけなのだから、それくらいは許されるはずだ。
わたしの質問に、おーちゃんは「そうだな」とおかしそうに笑った。
「ほら」
こちらへと伸ばされた手を、わたしはきゅっと握りしめる。
伝わってくる温かい体温に、眠気を誘われた。
——ねえ、おーちゃん。
待たせてばっかりでごめん、なんて言ってくれたけど、これまでとは全然違うよ。
おーちゃんの口から、好きをもらえただけで、こんなにもプラスな気持ちになれるんだ。
お互いに、長い間想い続けてたなんて……。
両思いになれただけでも幸せなのに、こんなのって奇跡みたいだ。
……今度こそ、待てる子にならなくちゃ。