ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
16.前向きな気持ち
お休みをまた一日挟んで、わたしは二日ぶりに、制服に袖を通していた。
最後に鏡を見て髪を整えるわたしを、おーちゃんが難しい顔で観察している。
「……本当に大丈夫か? やっぱり、今週は休んだ方が……」
「大丈夫だって。このくらい」
松葉杖にだって、慣れてきたし。
そう付け足して笑顔を見せるけれど、おーちゃんは心配が拭えないのか、その表情は晴れない。
足のことだけを言っているんじゃないのだろう。
——おーちゃんが気がかりなのは、きっと康晴のほうだ。
あんなことがあってから、康晴とは、休んでいた間連絡が取れていない。
ちゃんと謝りたい。
ちゃんと会って、話がしたい。
わたしたちの関係が、どう変わってしまうかはわからないけど……。
このままにしてはいけないということだけは、確かだった。
前髪を撫で付け、よし、と気合を入れる。
けれどおーちゃんと向き合えば、わたしはもじもじしながら言った。