ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「ちょ、愛花……!? どした? 大丈夫?」
じわじわと滲む視界を落ち着かせるように、目を伏せた。
「足、痛いの?」
焦った美月の声に、わたしは返事ができないできた。
声を出したら、その途端、こみ上げてきたものが溢れてしまう気がした。
足よりもずっと、胸のほうが痛い。
……怖いなんて思えなかった。
いつもみたいに笑いかけてもらえないことが、こんなにも悲しいことだなんて思わなかった。
……康晴……。
わたしは康晴のことが、こんなにも友達として好きだよ。
また、一緒に笑いたいよ。
美月はなにも言わずに涙を流すわたしの背を、チャイムが鳴るまで、ひたすら優しくさすっていてくれた。