ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


ご飯を食べている間、おーちゃんはわたしを気にする素振りを見せつつも、泣いていた理由を聞いて来たりはしなかった。

必死に隠そうとしているのが、露骨に態度に出てしまっていたからかもしれない。

リビングにうずくまっていたわたしは、お風呂のほうからかすかに聞こえる水音を聞きながら、深く息を吐き出した。


……やっぱり、これ以上ここにいられない……。


お姉ちゃんへの後ろめたさが胸の内に膨れ上がって、窒息してしまいそうだった。


……家に、戻るべきだ。

おーちゃんがお風呂に入っている今、行動に移してしまえばいいのかもしれない。

……顔を見たら、また甘えてしまいそうだから。


わたしは決心して、立ち上がる。

パタパタと急ぎ足で荷物を置いてある部屋へ移動すると、散らばっているものをカバンの中へ次々と押し込んだ。

ハンガーにかけてある制服を乱暴に剥がして、カバンを背負う。


……もうここへは戻ってこないように、全部、持って帰らないと……。


カバンに入りきらなかったものは、なんとか抱えた。


早くしないと、……おーちゃんが上がって来ちゃう。


部屋をぐるりと見回し、忘れ物がないかを確認をして、玄関へと向かった。

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