ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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「愛花、携帯鳴ってるよ」
お昼休みになるなりトイレへ向かったわたしが教室へ戻ると、先にお弁当を広げていた美月が、ん、とお箸で机の上を指した。
確かに、携帯が振動している。
すぐに鳴り止まないそれは、メッセージではなく、着信を知らせるものみたいだ。
こんな時間に……誰だろう。
おーちゃんかな?
よっぽど急ぎのことではない限り、いつもはメッセージで済ませるのに……。
不思議に思って携帯を手に取ると、画面に表示されている予想外の名前に、わたしは目を丸くした。
「叔母さんからだ……」
わたしの呟きに、美月が首を傾げる。
滅多にない出来事に、わたしはなんだか、……ひどく胸騒ぎがした。