ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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「午前中に検査を終えて、……とりあえず、まだしばらく様子を見てから、そのうちリハビリを開始しようって、お医者さんが」
ようやく落ち着いたわたしは、叔母さんの声を、ふわふわとした気分で聞いていた。
……まだ、どこか夢心地だった。
それでも、お姉ちゃんとしっかりと握り合っている手から感じる熱が、これが現実なのだと物語っていた。
抱いていたはずの罪悪感も、気まずさも、……いざお姉ちゃんを目の前にすると、すべてがどうでもよくなってしまった。
ぎゅう、と手に力を込めると、お姉ちゃんがわたしを引き寄せる。
腫れぼったくなっているわたしの瞼を優しく撫でたお姉ちゃんは、困ったように眉尻を下げた。
「……いっぱい心配かけて、ごめんね」
わたしは、ふるふると力強く首を振った。
そして、
「……おかえり、お姉ちゃん」
ずっとずっと言いたかったひとことを告げる。
「……ただいま、愛花」
わたしは、……もう、この手を離したくない。
お姉ちゃんが元気でいてくれるだけで、——それだけで、いい。