ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「大丈夫?」
慎くんがわたしの隣に腰を下ろした。
心配そうに、こちらを覗き込んでくる。
「……嬉しすぎて、大丈夫じゃないかも……。ずっと心臓、ドキドキいってる」
「そりゃ、そうだよね」
「でも、ほんとによかった……」
「うん。……よかった」
ちらりと横を見ると、慎くんが、わたしと同じで制服姿のままであることに気がついた。
わたしたちのマンションから、車で1時間ほどのところに住んでいるいとこの慎くんは、ひとつ下の、高校1年生だ。
「わざわざ、学校抜け出して来てくれたんだね」
「まあね。母さんから連絡もらって、……心配だったから」
「そっか……お姉ちゃんのこと気にかけてくれて、ありがとう」
「……」
慎くんは、目を伏せると、人差し指で鼻の下を擦った。
「……愛ちゃんのことも、心配だったし」