ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……どういう、意味?」
わたしが何を考えてるかを、読み取ろうとする声色だった。
心の内側を探られてしまわないよう、顔を伏せたまま、おーちゃんの胸元から、手を離す。
「わたし、……おーちゃんのこと、好きでいるの、疲れちゃった……」
わたしは、痛みを覚えた喉に片手を添えた。
「あの日、出て行こうとしたのは、……おーちゃんと、ただのお隣さんに、戻ろうとしたからだよ」
「……それ、本気で言ってるの」
「うん。……だから、お姉ちゃんには、何も言わないで。わたしは、これからもおーちゃんとの関係を変えるつもり、……ないから」
覚悟を決めて、おーちゃんを見上げると、しっかりと目を合わせた。
「お姉ちゃんが戻ってきたから、わたしはもう大丈夫。……だからおーちゃんは、お姉ちゃんのことを気にしてあげて」
笑顔で言い終えると、わたしはおーちゃんの横を通り抜け、キッチンから出た。