ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
19.遠慮とわがまま side旺太
朝日の眩しさに眉間のあたりでこそばゆさを感じ、俺はゆっくりと目を開けた。
……もう朝か……。
目をつむっても、ちっとも落ち着かない思考に、とうとう寝るタイミングを逃してしまった。
仕方なく起き上がり、ふあ、とあくびをする。
髪をくしゃりと搔き上げて、部屋の隅に畳んだままの布団を視界に入れた。
窓の外から、とても久しぶりに、鳥のさえずりが聞こえてきた。
何気なく時計を確認すると、いつもならとっくに家を出ている時間だった。
面会時間は、昼過ぎからだから……。
のんびり準備すれば、丁度いいだろう。
ベッドから降りると、キッチンへと向かう。
寝ぼけ眼でコップに水を汲むと、漂ってきたカレーの香りに、お腹の虫が鳴いた。
……そういえば、昨日の夜、結局食べずにいたんだった。
思い出すと食欲が湧き、俺はカレーを温め直し、盛り付けた。
テーブルへと運び、空腹を満たしたいという欲のままに、一口食べる。
モグモグと口を動かしながら、背もたれにもたれた。
……目を閉じると、「ね、おいしい?」とウキウキで聞いてくる愛花の様子が、瞼の裏に浮かび上がった。