ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「それはお前のせいじゃないだろ」

「……でも……」

「それを言い出したら、……俺だって、お前の体調に気がつけなかったこと、後悔してる」

「そんなこと……っ」


首を振った結花は、眉を下げ、俺の手にそっと触れた。


「……わたしは、おーちゃんがいてくれて、本当によかったって思ってるの。もう充分、助けられてる。……愛花のことだって……」


結花の声が、少し揺れる。

握られた手に、力が込められた。


「愛花のこと、ひとりにしないでいてくれて……。本当に、ありがとう」

「……いや……。勝手なことしてる自覚はあったんだけど、……俺が落ち着かなかったんだ。立石さんたちには、だいぶ心配かけただろうし」

「……叔母さんたちは、今までわたしがおーちゃんにお世話になってること、全部知ってるから……絶大な信頼を置いてると思うよ」

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