ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「……だといいけど」


俺の返事に、結花はクスリと笑みをこぼした。

昨日、結花が目を覚ましたときに、立石さんが俺にまでわざわざ連絡をくれたということは……少しは、自惚れてもいいのかもしれない。


「……愛花も、すごく嬉しかったと思う。前から、おーちゃんにベッタリだったし」

「……最初こそ嫌われてたけどな」

「やだ、懐かしい」

「警戒心むき出しだったよな」

「それが今じゃ、おーちゃんのこと大好きだもんね」


結花の手が、俺から離れ、ベッドの上に戻る。


「おーちゃんも、愛花のこと可愛くて仕方がないって、感じだったし」

「……うん。……そりゃ、可愛いだろ。あんなに懐かれたらさ」

「……本当の妹みたいに思ってくれてたよね」

「うん」


俺の返事に、結花はどこか寂しそうな笑みを浮かべた。

ゆっくりと俺から顔をそらし、その視線は、愛花が届けてくれたという紙袋に向けられた。

< 371 / 405 >

この作品をシェア

pagetop