ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……だといいけど」
俺の返事に、結花はクスリと笑みをこぼした。
昨日、結花が目を覚ましたときに、立石さんが俺にまでわざわざ連絡をくれたということは……少しは、自惚れてもいいのかもしれない。
「……愛花も、すごく嬉しかったと思う。前から、おーちゃんにベッタリだったし」
「……最初こそ嫌われてたけどな」
「やだ、懐かしい」
「警戒心むき出しだったよな」
「それが今じゃ、おーちゃんのこと大好きだもんね」
結花の手が、俺から離れ、ベッドの上に戻る。
「おーちゃんも、愛花のこと可愛くて仕方がないって、感じだったし」
「……うん。……そりゃ、可愛いだろ。あんなに懐かれたらさ」
「……本当の妹みたいに思ってくれてたよね」
「うん」
俺の返事に、結花はどこか寂しそうな笑みを浮かべた。
ゆっくりと俺から顔をそらし、その視線は、愛花が届けてくれたという紙袋に向けられた。