ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「……ズルいね、おーちゃんは。……そんな、聞き方……」

「……悪い。まだ本調子じゃないお前に、こんな話……。でも、去年から、約束してただろ」


結花が倒れたと愛花から連絡があった、あの日。

それよりも少し前、……俺は結花と、連絡を取っていた。


「……お前の、『大事な話』って、何?」


本当ならば、あの日の夜、——俺は、結花とふたりきりで会うはずだった。

そして、結花の言う『大事な話』を聞くはずだったんだ。

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