ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「……それって……」
「わたしが用意した、おーちゃんへのプレゼント。あの日、……渡そうと思ってた」
けれど、結花はそう言うと、紙袋を元にあった机へと戻した。
「でも、……これはやっぱり、渡さないことにする。……おーちゃんは、ぬいぐるみとは違うから」
「……ぬいぐるみ?」
俺が首を傾げると、結花が笑顔を浮かべる。
そして、そっと目を閉じて、深く息を吐いて、
「大事なのは、おーちゃんの気持ちだから」
まるで、何かの覚悟を決めたように見えた。
「……だからわたしは、……おーちゃんの気持ちを、聞きたいの」
「……」
今度は、俺が覚悟を決める番だった。
……俺の気持ちは、結花を傷つけるものだ。
深く、静かに、息を吸い込んだ。
「……俺は、……愛花のことを、好きだよ」