ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「お姉ちゃんが倒れたのはわたしのせいなのに、おーちゃんまで奪うなんて……、そんなことできない」
「なにそれ。おーちゃんは物じゃないでしょ?」
「そうだよ。おーちゃんがどうするべきかだって、お前が決めることじゃない」
「……」
ふたりから降りかけられる言葉に、ジワリと目に涙が浮かぶ。
「……だって、じゃあ、どうしたらいいの。……知っちゃったものは、しょうがないじゃん。わたしにとって、お姉ちゃんはたったひとりの家族なの。……この先、おーちゃんと一緒にいる度に、お姉ちゃんへの後ろめたさを感じ続けるんて、……わたしには、耐えられない」
わたしの言葉に、美月は呆れたように息を吐いた。
窓へと寄りかかり、わたしを見下ろす。
「そんなこと言ったって……、じゃあ、愛花はおーちゃんを好きな気持ちを我慢したまま、ふたりを応援するの?」
「……うん」
だって、……それしか、思いつく方法がないんだ。
お姉ちゃんには、これ以上、辛い思いをして欲しくない。