ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「……さてと。腹減らないか?」


聞かれて、わたしはこぼれてしまいそうになった涙を慌てて拭った。

言われてみれば、お昼を食べていなかった。

同意をしようとして——、声を出す前に、わたしのお腹が大きな音を立てて返事をした。

バッ! と半ば反射的にお腹を押さえる。


「……」

「だよな」


病院だから大声で笑うことはしなかったおーちゃんだけれど、耐えようにも耐えきれない、という様子で肩を揺らしている。

カッと顔や耳が一気に熱くなるのがわかった。

わたしはまた別の意味で涙目になりながら、おーちゃんを精一杯睨んだ。


「い、意地悪……」

「今のは俺、なにも悪くないだろ。いいからほら、飯食いに行こう」

「行きます……」
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