ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
21.マトリカリア305号室
少し重たいダンボールをドサリと車に乗せ、わたしは額に滲んだ汗を拭った。
九月も半ばだというのに、夏の延長戦のように、太陽は容赦なくジリジリと照りつけている。
「それで最後?」
わたしは、後ろからダンボールをふたつ抱えてやってきたおーちゃんを振り返った。
「うん」
軽々と荷物を車に入れ、おーちゃんはパンパン、と手を叩く。
すべて運び終わってみると、トランクに収まりきらなかったダンボールが、後部座席を半分ほど占領してしまっていた。
「……これ、ふたり入れる?」
隣にいた叔母さんと慎くんと、座席のスペースを見比べる。
「くっついて座るから、大丈夫よ」
「叔母さん。わたしが慎くんと後ろに座るよ」
お姉ちゃんがすかさず言った。
「いいのいいの。結ちゃんは、助手席に座って」
「でも……」
「だーめ。家まで1時間くらいかかるから、ひとりでゆったり座りなさい。久しぶりの移動で、疲れちゃうと思うし」
叔母さんの言葉に、お姉ちゃんは渋々頷いた。