ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
荷物を持つと、お姉ちゃんに「またくるね」と声をかけて、病室を後にする。
ドアを閉めてから、再び、ふーっと息を吐いた。
……やっぱり、慣れない。
そのまま表札の名前を見つめていると、
「行くぞ」
ふと手を取られる。
そのまま歩き出したおーちゃんに連れられて、わたしは病室に背を向けた。
おーちゃんの少し後ろで手を引かれるようにして足を進めながら、目の前の大きな背中を見つめる。
お姉ちゃんが目覚めないことはとても怖くて、苦しくて……、どうにかなってしまいそうなくらい、辛い。
だけど……。
『ひとりにしたくないんだよ』
——この人がいるから、大丈夫。
おーちゃんがいるから、わたしは大丈夫でいられる。
お姉ちゃんが起きるその日を、信じて待っていられる。