ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
ぎゅう、と繋いだ手に力を込めると、おーちゃんがこちらを振り返った。
形のいい瞳がわたしを捉えて、そっと細められる。
まるで安心させるように、わたしの手を強く、しっかりと、握り返してくれた。
——大好き。
喉の奥からこみ上げてくるその言葉を、わたしはぐっと飲み込んだ。
……声に出したら、おーちゃんはどんな反応をするんだろう。
なんて言うんだろう。
わたしのこと、妹みたいに可愛がってくれてるけど……。
わたしはお兄ちゃんとしてじゃなく、男の人として好きだよ、って伝えたら……わたしのこの想いを、少しは嬉しいって感じてくれるのかな。