ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
03.こどもとおとな
翌日の授業終わり、わたしは美月に引っ張られるまま、学校から電車で少しのところにある繁華街までやってきていた。
カフェに入って食事を済ませると、待ってましたと言わんばかりに、美月がテーブルに手をついた。
「……で? 愛花の好きな人って、昨日のお兄さんなんでしょ?」
真剣な顔で覗き込まれ、危うくアイスティーを吹き出してしまうところだった。
なんとかこらえて、慌てて紙ナプキンで口を押さえる。
「いきなりなに言って……っていうか、なんで知って……!?」
テンパるわたしを、美月はいやいや、と軽くなだめた。
「あんなにぽわーんとした顔で見つめてたら、『わたしの好きな人はこの人です』って言ってるようなものだよ」
「ぽ、ぽわーん……?」
「あの様子じゃあ、康晴だって、自分のフラれた理由があの人だって気がついただろうね」
「えええ……」
わたしは頭を抱えて、ずるずるテーブルに崩れる。
——だからあのとき、怒ってるように見えたんだ……。
自分の表情筋の緩さを呪いながら、わたしはうう、と唸った。