転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 ちゅ、ちゅ、と音をたてながら、春人の唇が首筋や鎖骨をたどる。

 結乃の右手は捕らえられたまま、今やベッドの上に縫い止められていた。彼のもう片手は、白いシーツに散らばる結乃の髪を優しく梳いている。

 はあ、と彼女の肩口で熱い息を吐いて、春人がうなるように声を漏らした。


「すまない、性急すぎるのはわかってる。けどもう、止められない」


 そのつぶやきに、結乃はそっと、まぶたを開いた。
 すぐそばに、春人の艶のある黒髪が見える。自分の身体へすがりつくように顔を埋める彼の姿に、きゅんと胸がときめいた。

 自分から願い出たこととはいえ、一緒に暮らし始めた最初の夜以降、本当に一切、春人が結乃に触れようとしたことはなくて。

 もしかすると、彼は自分の身体にあまり興味がないのかもしれないと思っていた。

 けれど今、こんなにも求められていたことを知って、羞恥とともに言いようのないうれしさが込み上げる。

 結乃はふっと身体の力を抜くと、自由だった左手を伸ばし、春人の頭を撫でた。
 触れた瞬間、ビクリと彼の背中がはねる。


「春人さん」


 その声を聞いて、春人が顔を上げた。
 目が合った結乃は、まっすぐに彼を見つめて微笑む。


「謝らなくて、いいです。……止める必要は、ないですから」


 瞬間、春人が驚きに目を見開いて息を詰めた。

 それからぐっと眉間にシワを寄せると、険しいその表情のまま結乃の肩口に顔を埋める。
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