転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 初めて結乃からねだったそれは、先ほど交わした獣じみたものとは違う、甘くとろけるようなキスだった。

 結乃がたまらず鼻にかかった声を漏らせば、春人が重ねた唇の端を僅かに上げる。


(熱い。気持ち、いい……)


 与えられる淫靡で緩やかな刺激に、頭がぼーっとしてきた。

 思考力が低下して、その分羞恥心も和らいでいるらしい。春人が身を引いて一瞬口づけを解こうとした瞬間、結乃は反射的に首を傾けて自分の舌を伸ばし、離れかける舌に追いすがっていた。
 それに気を良くしたのか、春人は捕らえた右手に力を込めるとますます口を大きく開けて、深く結乃の唇を味わう。

 結乃の身体から力が抜けたことを確認した春人が、キスを交わしながら左手を不埒に動かし始めた。

 その手がニットの中に入り込んで背中へと回り、いとも簡単にブラジャーのホックを外した瞬間──過剰なほど結乃の身体がビクンとはね、ハッとした春人が唇を離す。


「っと……胸は、触られたくないんだったな」


 以前彼女が言っていたことを思い出して、ひとりごとのようにつぶやいた。

 結乃を形造るものならすべてが愛おしいので、ここも存分に可愛がってやりたかったが仕方ない。
 そう考え、結乃のほっそりとした足をたどり春色のプリーツスカートの中へ手を滑り込ませようとしたのだが……思いがけず、結乃が声を発したことで動きを止めた。


「だ……だい、じょうぶです」
「え?」
「胸……大丈夫ですから、触ってください……」


 先ほどのキスの余韻か、瞳を潤ませた彼女の言葉にゴクリと唾を飲んだ。

 太ももに置いていた左手を持ち上げ、優しく結乃の頬を撫でながらその顔を覗き込む。
< 105 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop