転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「いいのか? こないだは、嫌がってただろう」
「もう、いいんです……でもあの、もしかしたら、がっかりさせちゃうかもしれないんですけど……」


 ふと、不安げに目を伏せた。そんな彼女のひたいに、コツンと自分のそれを軽く当てる。


「がっかりすることなんてない。俺は結乃のことなら、なんだって知りたいと思ってる」


 顔がぼやけるくらいの至近距離で真摯な瞳に射抜かれ、殊更結乃の顔に熱が集まった。

 束の間、逡巡するように目を泳がせてから、ギュッとまぶたを下ろして自ら唇を押しつける。

 一瞬だけ触れてすぐに距離を取ると、春人は不意を突かれた表情で固まっていた。


「ありがとう、春人さん。私、春人さんがはじめてのひとでよかった」


 そう言ってはにかむ結乃を、未だ硬直したまま見つめる春人。

 数秒後ようやくまばたきをした彼は、深くため息を吐いて彼女から視線を逸らす。


「結乃は……俺をよろこばせる天才だな」
「えぇ? そうですか?」
「そうだ。自覚がないのが、また末恐ろしいな」


 そんなことを話しながらも、春人の表情はどこかうれしそうにも見える。

 きょとんとしている結乃にふっと口もとを緩めると、頬へキスを落とした。


「俺も、がんばって(よろこ)ばせないと」


 言葉と同時に、先ほどホックを外したブラジャーをキャミソールとニットごと大きな手によって上にずらされる。

 結乃が「あっ」と声を漏らしたが、もう遅い。春人の眼前に裸の胸がさらされたことで、かあっと身体中が熱くなった。

 食い入るように結乃の白い肌を見つめていた春人が、彼女の右手に重ねていた手を外し、つ、とある一点に触れる。


「ん、」
「これは……」


 春人の長い人差し指がなぞっているのは、右胸にある件の痣だ。
 これがあったから、結乃は彼に胸をさらすことを躊躇っていた。
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