転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 一体、春人がどんな反応をするのか。無意識に目をつむっていた結乃は、突然感じた刺激に慌ててまぶたを上げる。


「な、は、はる……っ」


 なんと春人は痣に唇を寄せ、まるで動物が自らの傷跡を癒そうとするがごとく舌を這わせていた。

 彼は結乃の視線に気づくと、見せつけるようにまたべロリと赤い舌で痣を舐め上げる。


「あ、」
「これは、もう痛みはないのか?」
「うっ、生まれつきの、痣だから……っ」
「そうか」


 話しながらも、春人は時折ちゅ、と痣に吸い付いたり、かと思えばやわらかな白い丘に歯をたてた。


「んん……っ」


 息が、上がる。丁寧に丁寧に、緊張で強ばる心と身体を溶かされる。

 自分の身体がどんどん知らないものへと作り変えられているような感覚に戸惑って、結乃は眉根を寄せながらきつく目を閉じてばかりだ。

 けれどもその口からはぐずぐずに甘ったるく蕩けた声がひっきりなしにこぼれているため、春人は内心安堵しながら待ち望む瞬間のための下準備に精を出した。


「……結乃、大丈夫か?」


 もう何度目かになる高みに押し上げられた結乃が荒い呼吸を繰り返していると、甘いささやき声とともに優しい手つきで頬を撫でられた。

 改めて見ると、こっちは何から何まで乱されまくりだというのに、春人は全身きっちりと服を着込んだままだ。

 向けられる瞳は情欲に濡れているものの、あくまで彼は結乃のことを気遣い、伺いを立てる。
 それらすべてが、彼の余裕と経験値の高さを表しているようで──どうにも不満な結乃は、知らずうちその心情を顔にも出していた。


(……私は、こんなにわけわかんなくなってるのに)


 初めの頃胸の上あたりで引っかかっていたはずの下着とニットも、いつの間にやら取り払われてベッドの下。今や結乃は、春人からプレゼントされたネックレス以外は何も身につけていない、生まれたままの姿を彼の前に晒している。
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