転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「あまり煽らないでくれ。手加減できない」


 劣情を駆り立てる妻の発言に、ふーと深く息を吐いてなんとか心を落ちつかせた。

 わかりやすく余裕のない彼を目の当たりにして、結乃の胸が高鳴る。


「春人さん」
「……もしかしたら、結乃をこわがらせてしまうかもしれない。でも、傷つけたいわけでは、ないから」


 片手で優しく頬に触れながらどこか苦しげに、許しを乞うように告げた春人に、結乃は眉を下げて微笑んだ。


「知ってますよ。……きて、春人さん」


 彼女のささやきを合図に、とうとうふたりはひとつになる。

 言葉と誠意を尽くし、時間をかけて馴染ませた先には、言いようのない快楽が待っていた。

 互いの身体に、互いが溺れる。肌同士が触れた部分から混じりあって溶けてしまいそうなほど、ふたりは熱く身体を重ねた。


(俺のもの、だ……)


 いじらしくギュッと目を閉じて羞恥や快感に耐える結乃を見下ろしながら、春人は彼女の鎖骨の上で揺れるダイヤのネックレスを恍惚の表情で眺める。

 それから枕の端を握りしめていた彼女の左手を取り、薬指に光るリングへ唇を落とした。


「あっ、はると、さん……?」


 気づいた結乃が、うっすらまぶたを開ける。
 まるで忠誠を誓う騎士のような姿の春人と目が合い、トクンと心臓をはねさせた。

 そのときめきが伝わってしまったのだろうか。優しいのに、どこか獲物を狙う肉食獣を思わせる危険な瞳をした春人が唇を離さないままふと口角を上げたから、また結乃は羞恥に顔を赤くする。

 そんな妻の頬にあやすようなキスをして、また春人は彼女の身体を翻弄することに没頭し始めた。


「ああっ、はるとさん……!」
「結乃……っ」


 優しくしたい。どろどろに甘やかしたい。いつだって笑顔でいて欲しい。
 壊したい。ぐちゃぐちゃにひどくしたい。その涙にすら、欲情する。

 相反する強い想いを抱きながら、春人は己を受け入れてくれている最愛の女性に強く自身を刻みつけた。
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