転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
長い間正体が曖昧だった感情にハッキリとした名前がついたことで、やけに晴れ晴れとした気分だった。実際そのときの丸く見開かれたハルトの目は、いつもより光があって人間らしかった──とは、近くでその瞬間を目撃していた他の騎士仲間の証言である。
この先もユノとともにいたい。それには、今の幼なじみという関係では足りない。
思い至って、決意した。次に会えたときからは、言動にもう少しわかりやすさを心がけよう。求婚までは気が早いが、自分が相手を大切に想っている分だけ、それを伝える努力をしてみよう。
周囲への気配りはできるくせに意外と鈍感なところがある彼女は、おそらく最初はこちらの真意に気づかないかもしれない。だけど何度でも、おまえが大切なんだと伝えよう。
それにはまず仏頂面をなんとかしろ、と件の友人には言われたが、今さらどうにもできないしきっとユノも変えて欲しいとは思わないのだろうとわかっている。
そんな彼女だからこそ、ここまで特別になった。自分の人生に、彼女の存在がなくなることはありえない。
今頃ユノも、配置された救護施設で傷病者のために必死で闘っているのだろう。
早く──顔が、見たかった。
「ラノワール!! ここにいたのか……っ!!」
そんなふうに思考に耽っていたら、石段を駆け上がってくる足音に気づくのが遅れた。
息を切らしながら現れたのは、ハルトと同じ近衛騎士団の白い団服に身を包んだ体格のいい男。その男こそ、ハルトにユノへの恋慕を自覚させた人物なのだが──。
「どうした。敵襲か?」
切羽詰まった同僚の様子を見て、ハルトは声音を鋭くさせる。
目の前までやってきた男はひどく痛々しい面持ちで、自身の呼吸が整うのも待たずまくし立てた。
「違う、ここじゃない! やられた、奴らよりによって、ギデルの仮設病院を……っ!」
「は……」
ドクン、とハルトの心臓が大きくはねる。
ギデル地区の、仮設病院。
そこは、ユノの──。
「伝令によれば、生存者は入院していた兵士数名だけで……あとは医療者も含め、全滅だと」
すぐ目の前にいるはずの男の声が、遠く聞こえる。
立ち尽くすハルトの脳裏に浮かぶのは、こんなどうしようもない自分にもいつだって向けられてきた、ユノの鮮やかな笑顔だった。
この先もユノとともにいたい。それには、今の幼なじみという関係では足りない。
思い至って、決意した。次に会えたときからは、言動にもう少しわかりやすさを心がけよう。求婚までは気が早いが、自分が相手を大切に想っている分だけ、それを伝える努力をしてみよう。
周囲への気配りはできるくせに意外と鈍感なところがある彼女は、おそらく最初はこちらの真意に気づかないかもしれない。だけど何度でも、おまえが大切なんだと伝えよう。
それにはまず仏頂面をなんとかしろ、と件の友人には言われたが、今さらどうにもできないしきっとユノも変えて欲しいとは思わないのだろうとわかっている。
そんな彼女だからこそ、ここまで特別になった。自分の人生に、彼女の存在がなくなることはありえない。
今頃ユノも、配置された救護施設で傷病者のために必死で闘っているのだろう。
早く──顔が、見たかった。
「ラノワール!! ここにいたのか……っ!!」
そんなふうに思考に耽っていたら、石段を駆け上がってくる足音に気づくのが遅れた。
息を切らしながら現れたのは、ハルトと同じ近衛騎士団の白い団服に身を包んだ体格のいい男。その男こそ、ハルトにユノへの恋慕を自覚させた人物なのだが──。
「どうした。敵襲か?」
切羽詰まった同僚の様子を見て、ハルトは声音を鋭くさせる。
目の前までやってきた男はひどく痛々しい面持ちで、自身の呼吸が整うのも待たずまくし立てた。
「違う、ここじゃない! やられた、奴らよりによって、ギデルの仮設病院を……っ!」
「は……」
ドクン、とハルトの心臓が大きくはねる。
ギデル地区の、仮設病院。
そこは、ユノの──。
「伝令によれば、生存者は入院していた兵士数名だけで……あとは医療者も含め、全滅だと」
すぐ目の前にいるはずの男の声が、遠く聞こえる。
立ち尽くすハルトの脳裏に浮かぶのは、こんなどうしようもない自分にもいつだって向けられてきた、ユノの鮮やかな笑顔だった。