転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 残された結乃は、うつ伏せのままとっさに腕をついて上半身を浮かせていた状態から、またボスンとベッドに沈み込んで。


「……はあああ~」


 ふかふかの枕を抱きしめて顔を埋めながら、深い深いため息を吐く。


(とうとう、春人さんと一線を越えちゃった……)


 いつかこんな日が来るのはわかっていた。
 だけどまさか、あんな……あんなに恥ずかしくて頭がおかしくなりそうで、気持ちのいいものだなんて思ってもみなかった。

 最中に向けられていた春人の余裕ない顔や声を思い出すと、きゅうっと胸に甘い痺れが走る。


「……優しかったなあ」


 布団に包まれて子どものように丸くなりながら、小さくこぼす。

 始め方は多少強引だったとはいえ、ずっとこちらの様子を気にかけながら、丁寧に行為を進めてくれた。

 まあ、一度終わってからの予想外な延長戦と、バスルームでの不埒なイタズラはいただけないが。


(私、大事にしてもらってる)


 左手を顔の前にかざして薬指に光るリングを眺めながら、つい顔がほころぶ。

 ちなみにこちらもすでに結乃の宝物となっているネックレスは、シャワーの前に外して今はベッドボードの引き出しに一旦しまってあった。

 少しだけ開いたドアの隙間から、キッチンの物音が心地良く耳に届く。

 たしかにまだ、身体は重いしあちこちだるい。それでもここにひとりきりでいるのはなんだかもったいない気がして、結乃は緩みきった自分の顔を引き締めるようにペチペチと両手で軽く叩いてから、ベッドを抜け出した。
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