転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
束の間呆気にとられていた結乃は、直後すぐに頬を熱くさせる。
「絶対、おもしろがってますよね?!」
「バレたか」
悪びれもせず答えて、今度こそ春人も席についた。
自分ばかりが動揺させられて悔しい結乃は、それでも目の前の春人がどこか機嫌良さそうに表情を和らげているのを見て、続けるつもりだった文句を飲み込んでしまう。
(甘いなあ私……春人さんのこんなカオ見たら、多少の意地悪も『まあいっか』って思っちゃう)
せめてもの意思表示として、無言のままじっとりと拗ねた眼差しを向けながらふた口目のパンケーキを口に運んだ。うう、やっぱりおいしい……。
「でも意外ですね、春人さんがこんなにパンケーキを焼くのが上手だったとは」
こちらも春人が淹れてくれたミルクコーヒーを飲みつつ、思わずそんなことをポツリとこぼす。
「ああ。一時期なぜか、妙にハマったことがある。食べたい……というよりは、どうすればおいしいパンケーキが作れるようになれるか、という感じの衝動に駆られて、ほぼ毎日焼いていた。まだ大学生だった頃だ」
自分の皿のパンケーキにジャムを塗りながら、彼が答えた。
そこで結乃の脳内に閃いたのは、今目の前にいる春人ではなく──前世での彼、ハルトとの記憶だ。
『……これが好きだと、師範から聞いた』
ユノの9歳の誕生日。その日、彼女の父による稽古が終わってとっくに日も暮れた頃、一度帰宅したはずのハルトが道場に隣接しているユノの自宅に突然やって来た。
予想外の訪問者に驚きつつ、彼が大事そうに両手で抱えていた紙袋を受け取る。中に入っていたのは、少し形が歪つな1枚のパンケーキだった。
どうやら彼は日中いつものように道場へと顔を出したユノが、複数の門下生たちに誕生日を祝う言葉やプレゼントをもらっていた場面をしっかり見ていたらしい。
「絶対、おもしろがってますよね?!」
「バレたか」
悪びれもせず答えて、今度こそ春人も席についた。
自分ばかりが動揺させられて悔しい結乃は、それでも目の前の春人がどこか機嫌良さそうに表情を和らげているのを見て、続けるつもりだった文句を飲み込んでしまう。
(甘いなあ私……春人さんのこんなカオ見たら、多少の意地悪も『まあいっか』って思っちゃう)
せめてもの意思表示として、無言のままじっとりと拗ねた眼差しを向けながらふた口目のパンケーキを口に運んだ。うう、やっぱりおいしい……。
「でも意外ですね、春人さんがこんなにパンケーキを焼くのが上手だったとは」
こちらも春人が淹れてくれたミルクコーヒーを飲みつつ、思わずそんなことをポツリとこぼす。
「ああ。一時期なぜか、妙にハマったことがある。食べたい……というよりは、どうすればおいしいパンケーキが作れるようになれるか、という感じの衝動に駆られて、ほぼ毎日焼いていた。まだ大学生だった頃だ」
自分の皿のパンケーキにジャムを塗りながら、彼が答えた。
そこで結乃の脳内に閃いたのは、今目の前にいる春人ではなく──前世での彼、ハルトとの記憶だ。
『……これが好きだと、師範から聞いた』
ユノの9歳の誕生日。その日、彼女の父による稽古が終わってとっくに日も暮れた頃、一度帰宅したはずのハルトが道場に隣接しているユノの自宅に突然やって来た。
予想外の訪問者に驚きつつ、彼が大事そうに両手で抱えていた紙袋を受け取る。中に入っていたのは、少し形が歪つな1枚のパンケーキだった。
どうやら彼は日中いつものように道場へと顔を出したユノが、複数の門下生たちに誕生日を祝う言葉やプレゼントをもらっていた場面をしっかり見ていたらしい。