転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
まさか、そこでハルトが──わざわざ自分の師に娘の好みを訊ね、こうしてプレゼントとして持ってきてくれるなんて。
紙袋の中身を覗き込んだまま思わず固まっていたユノに、ハルトが居心地悪そうな様子でボソボソと言う。
『母さんと一緒に作ったから、変なものは入れてないはずだ。それが1番、形がまともだった』
綺麗なまんまるじゃなくて、ちょっぴり焦げた、たった1枚のパンケーキ。
それでもそのプレゼントに、ユノの心はドキドキと弾んで自然と顔がほころんだ。
『ありがとうハルト! すっごく、うれしい!』
紙袋を潰してしまわないように抱きしめながら、満面の笑みで礼を伝える。
それを見た彼も、ほのかに口もとを緩ませたのだった。
その後もハルトは16歳で騎士団に入団するまで、ユノの誕生日には毎年パンケーキを持ってきてくれた。
彼の焼くパンケーキは年々驚くほどおいしくなっていたから、もしかしたらユノの誕生日以外の日にも作って腕を磨いていたのかもしれない。
そんな、前世でのささやかな思い出と今目の前にある光景がシンクロして、結乃の心臓が無性に騒ぐ。
……まさか。
きっと、偶然だ。
偶然のはずだと、思うのに──そのひとことだけで片づけたくないと、思ってしまう自分がいる。
(もしもこのひとの中に、ユノの存在がほんの少しでも残っているんだとしたら……)
じわりと胸の奥に広がったのは、言いようのないあたたかな気持ち。
春人が自分のために作ってくれた朝食に一度視線を落とし、それから結乃はまっすぐ彼を見つめてはにかんだ。
「……本当に、おいしいです。今から私の1番好きな食べ物は、春人さんの作ってくれるパンケーキになりました」
心からの想いで、伝える。
そのとき春人が見せた笑顔は、前世で初めてパンケーキをくれたあの日──礼を言ったユノの前でぎこちなく浮かべた微笑みと、とてもよく似ていた。
紙袋の中身を覗き込んだまま思わず固まっていたユノに、ハルトが居心地悪そうな様子でボソボソと言う。
『母さんと一緒に作ったから、変なものは入れてないはずだ。それが1番、形がまともだった』
綺麗なまんまるじゃなくて、ちょっぴり焦げた、たった1枚のパンケーキ。
それでもそのプレゼントに、ユノの心はドキドキと弾んで自然と顔がほころんだ。
『ありがとうハルト! すっごく、うれしい!』
紙袋を潰してしまわないように抱きしめながら、満面の笑みで礼を伝える。
それを見た彼も、ほのかに口もとを緩ませたのだった。
その後もハルトは16歳で騎士団に入団するまで、ユノの誕生日には毎年パンケーキを持ってきてくれた。
彼の焼くパンケーキは年々驚くほどおいしくなっていたから、もしかしたらユノの誕生日以外の日にも作って腕を磨いていたのかもしれない。
そんな、前世でのささやかな思い出と今目の前にある光景がシンクロして、結乃の心臓が無性に騒ぐ。
……まさか。
きっと、偶然だ。
偶然のはずだと、思うのに──そのひとことだけで片づけたくないと、思ってしまう自分がいる。
(もしもこのひとの中に、ユノの存在がほんの少しでも残っているんだとしたら……)
じわりと胸の奥に広がったのは、言いようのないあたたかな気持ち。
春人が自分のために作ってくれた朝食に一度視線を落とし、それから結乃はまっすぐ彼を見つめてはにかんだ。
「……本当に、おいしいです。今から私の1番好きな食べ物は、春人さんの作ってくれるパンケーキになりました」
心からの想いで、伝える。
そのとき春人が見せた笑顔は、前世で初めてパンケーキをくれたあの日──礼を言ったユノの前でぎこちなく浮かべた微笑みと、とてもよく似ていた。