転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「まだ何か準備してくれたのか? 結婚祝いなら、もう受け取ってるのに」
「金だけってのも情緒がないだろ。ああでも、うっかり車に忘れて置いてきた」
「何しに来たんだおまえは」
思わず突っ込んだ春人だったが、「いやー、悪い悪い」と悪びれもせず答えた仁に呆れ顔で閉口した。
そうして仁は、なぜか春人に向け片手を立てる。
「悪いついでに、頼む。地下駐車場にある俺の車から、結婚祝い取ってきてくれ」
「は?」
思いもよらない彼のセリフに、春人が隠しもせず怪訝な顔をした。
声には出さなかったが、傍らにいる結乃も驚いて目を丸くする。
「祝うのはありがたいが、なんでそうなる」
「だってほら、またいちいちインターホン鳴らすのも面倒くさいし」
「理由が雑すぎる」
「正直に言えば、奥方とふたりきりで話したいなと思って」
「ふざけるなよ……」
春人の口からこれまで聞いたことのないドスのきいた唸り声が出て、結乃の方がひゃっと肩を震わせた。
こんなにも不穏な雰囲気がただよっているというのに、仁は慣れているのか相変わらず飄々とした態度でどら焼きの最後のひとかけらを口に放り込む。
「俺のプレゼントはかなり実用的だから、今日にでもさっそく使えるんだけどなあ……気になるだろ?」
「ならない。今すぐ帰れ」
「あ、あの、春人さん」
思わず結乃が口を挟むと、春人は仁に向けていたものよりも遥かに穏やかな眼差しで彼女を振り返った。それでもかなり不機嫌そうではあるが。
そんな彼へ、結乃はおずおずと申し出る。
「私でよければ、取ってきますよ?」
「え。いや結乃、」
「あーあ、なっさけないねぇ。心の狭い束縛夫にはもったいない、優しい奥方だなぁ」
「金だけってのも情緒がないだろ。ああでも、うっかり車に忘れて置いてきた」
「何しに来たんだおまえは」
思わず突っ込んだ春人だったが、「いやー、悪い悪い」と悪びれもせず答えた仁に呆れ顔で閉口した。
そうして仁は、なぜか春人に向け片手を立てる。
「悪いついでに、頼む。地下駐車場にある俺の車から、結婚祝い取ってきてくれ」
「は?」
思いもよらない彼のセリフに、春人が隠しもせず怪訝な顔をした。
声には出さなかったが、傍らにいる結乃も驚いて目を丸くする。
「祝うのはありがたいが、なんでそうなる」
「だってほら、またいちいちインターホン鳴らすのも面倒くさいし」
「理由が雑すぎる」
「正直に言えば、奥方とふたりきりで話したいなと思って」
「ふざけるなよ……」
春人の口からこれまで聞いたことのないドスのきいた唸り声が出て、結乃の方がひゃっと肩を震わせた。
こんなにも不穏な雰囲気がただよっているというのに、仁は慣れているのか相変わらず飄々とした態度でどら焼きの最後のひとかけらを口に放り込む。
「俺のプレゼントはかなり実用的だから、今日にでもさっそく使えるんだけどなあ……気になるだろ?」
「ならない。今すぐ帰れ」
「あ、あの、春人さん」
思わず結乃が口を挟むと、春人は仁に向けていたものよりも遥かに穏やかな眼差しで彼女を振り返った。それでもかなり不機嫌そうではあるが。
そんな彼へ、結乃はおずおずと申し出る。
「私でよければ、取ってきますよ?」
「え。いや結乃、」
「あーあ、なっさけないねぇ。心の狭い束縛夫にはもったいない、優しい奥方だなぁ」