転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
視線を上げて結乃の方へと顔を向けた仁は、彼女の表情を見てふっと頬を緩めた。
「申し訳ない。泣かせるつもりは、なかった」
「っご、めん、なさい……っ」
言いながら慌てて両手を持ち上げ、ボロボロと涙がこぼれる目もとを拭う。
……悲しい。もうずっと昔の出来事の話なのに、それでもどうしたって、悲しかった。
顔を伏せながら必死に涙を止めようとしている結乃を見つめながら、仁がやわらかな笑みを浮かべる。
「今世であの男が結婚すると言って、しかもその相手が貴女だと知ったとき、本当に驚いた。だけどそれ以上に、心からうれしくて安堵したんだ」
結乃が僅かに顔を上げた。
その濡れた瞳を見据え、仁は続ける。
「一度は絶望に突き落とされたアイツの想いが、ようやく報われた。たとえ記憶がなくとも……魂で、貴女を欲したんだろうな」
「そんな……欲した、だなんて」
小さく返しながら、ざわ、と胸が騒ぐ。
どうして──どうしてこのひとは、そんなことを言うのだろう?
どこか戸惑った反応を察した仁が、眉をひそめた。
「まさか、気づいてなかったのか? アイツと近しい人間からすれば、あれだけわかりやすかったのに?」
「あの、何を……?」
本気で困惑している彼女を見て、少しだけ逡巡する。
そうして彼は決意し、また口を開いた。
「あの男は……ラノワールは、貴女のことを愛していた。それこそ、貴女の訃報を聞いて自分の生きる気力も失うくらいに」
「申し訳ない。泣かせるつもりは、なかった」
「っご、めん、なさい……っ」
言いながら慌てて両手を持ち上げ、ボロボロと涙がこぼれる目もとを拭う。
……悲しい。もうずっと昔の出来事の話なのに、それでもどうしたって、悲しかった。
顔を伏せながら必死に涙を止めようとしている結乃を見つめながら、仁がやわらかな笑みを浮かべる。
「今世であの男が結婚すると言って、しかもその相手が貴女だと知ったとき、本当に驚いた。だけどそれ以上に、心からうれしくて安堵したんだ」
結乃が僅かに顔を上げた。
その濡れた瞳を見据え、仁は続ける。
「一度は絶望に突き落とされたアイツの想いが、ようやく報われた。たとえ記憶がなくとも……魂で、貴女を欲したんだろうな」
「そんな……欲した、だなんて」
小さく返しながら、ざわ、と胸が騒ぐ。
どうして──どうしてこのひとは、そんなことを言うのだろう?
どこか戸惑った反応を察した仁が、眉をひそめた。
「まさか、気づいてなかったのか? アイツと近しい人間からすれば、あれだけわかりやすかったのに?」
「あの、何を……?」
本気で困惑している彼女を見て、少しだけ逡巡する。
そうして彼は決意し、また口を開いた。
「あの男は……ラノワールは、貴女のことを愛していた。それこそ、貴女の訃報を聞いて自分の生きる気力も失うくらいに」