転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
そんな彼女の抗議を、仁はバッサリとはねつける。
「いないも同然だろう? 姿かたちが同じでも、あの頃の記憶がないのならばそれはまったくの別人だ」
とっさに、言い返す言葉が出なかった。結乃が目を伏せて唇を噛む。
ソファーの背に深くもたれた仁は、この話は終わりとばかりに両腕を組んだ。
「にしても、今のきみはアイツのことを『春人さん』と呼ぶんだな。あの頃はたしか愛称だっただろ? 俺ですら今はファミリーネームじゃなくなったというのに、一体なぜだ?」
「え……まあ、ケジメといいますか……」
突然の話題転換に若干拍子抜けしつつ、ボソボソと答える。
小首をかしげて「ケジメ?」と不思議そうにする仁へ、ひとつ息を吐いてから続けた。
「私には……昔の記憶がありますから。前世での『ハルト』と現在の『春人さん』を、無意識にでも混同しないようにしたいんです。それにブルースト殿ならご存知かと思いますが、私、ハルトに対して結構ずけずけとした物言いをしていたというか、遠慮がなかったでしょう? いくら幼なじみとはいえ、4つも年下のくせに我ながら小生意気だったなと反省しまして……同じ呼び方をしていたら、そのうちまたあの頃のようにかわいげのない態度をとってしまうようになるかな、と……」
話しながら、どことなく気恥ずかしくなってきて声が小さくなった。
予感した通りというべきか、結乃の答えを聞いた仁はにやにやと含みのある笑みを浮かべている。
結乃はじっとりと、その顔を軽く睨んだ。
「いないも同然だろう? 姿かたちが同じでも、あの頃の記憶がないのならばそれはまったくの別人だ」
とっさに、言い返す言葉が出なかった。結乃が目を伏せて唇を噛む。
ソファーの背に深くもたれた仁は、この話は終わりとばかりに両腕を組んだ。
「にしても、今のきみはアイツのことを『春人さん』と呼ぶんだな。あの頃はたしか愛称だっただろ? 俺ですら今はファミリーネームじゃなくなったというのに、一体なぜだ?」
「え……まあ、ケジメといいますか……」
突然の話題転換に若干拍子抜けしつつ、ボソボソと答える。
小首をかしげて「ケジメ?」と不思議そうにする仁へ、ひとつ息を吐いてから続けた。
「私には……昔の記憶がありますから。前世での『ハルト』と現在の『春人さん』を、無意識にでも混同しないようにしたいんです。それにブルースト殿ならご存知かと思いますが、私、ハルトに対して結構ずけずけとした物言いをしていたというか、遠慮がなかったでしょう? いくら幼なじみとはいえ、4つも年下のくせに我ながら小生意気だったなと反省しまして……同じ呼び方をしていたら、そのうちまたあの頃のようにかわいげのない態度をとってしまうようになるかな、と……」
話しながら、どことなく気恥ずかしくなってきて声が小さくなった。
予感した通りというべきか、結乃の答えを聞いた仁はにやにやと含みのある笑みを浮かべている。
結乃はじっとりと、その顔を軽く睨んだ。