転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「なんですか、その笑い」
「いや。友人夫妻が想像以上にラブラブで、喜ばしいなぁと」
「そんなお世辞で、からかわないでください」
うっすら頬を赤くした彼女が、不満げにつぶやく。
すると仁は、今度こそ声に出して笑った。
「ははっ。そういえばラノワールは、貴女からもらったという緑色の髪紐を後生大事にしていた。また似たものを贈ってみたら、あの頃のことも思い出すかもな?」
「……別に、思い出さなくてもいいんです」
結乃のセリフに、仁が不思議そうに首をかしげる。
「何かの拍子に前世の記憶が戻ったのなら、それはそれとしてちゃんと受け入れられます。けれど私たちは“黒須春人”と“白川結乃”として出会って、夫婦になったんですから」
もはや、前世のことなど関係ない。
結乃は春人を心から信頼して、この先もずっと寄り添って生きていく覚悟を決めているのだ。
……だけど。
「でも……ブルースト殿の、言うように──」
先ほどからずっと、何かが喉の奥につかえているかのように息苦しい。
『たとえ記憶がなくとも……魂で、貴女を欲したんだろうな』
頭から離れない、あの言葉。
(もしかして……『春人さん』が、私を大事にしてくれるのは──……)
「ブラン──結乃さん? 大丈夫か?」
急に顔色を悪くして黙り込んでしまった結乃へ、仁が気遣わしげに声をかける。
うつむいていて見えにくい表情を覗こうと、肩に手を置きかけた瞬間。後頭部に勢いよく何かがぶつかり、ソファーに座る仁の身体が前につんのめる。
「いや。友人夫妻が想像以上にラブラブで、喜ばしいなぁと」
「そんなお世辞で、からかわないでください」
うっすら頬を赤くした彼女が、不満げにつぶやく。
すると仁は、今度こそ声に出して笑った。
「ははっ。そういえばラノワールは、貴女からもらったという緑色の髪紐を後生大事にしていた。また似たものを贈ってみたら、あの頃のことも思い出すかもな?」
「……別に、思い出さなくてもいいんです」
結乃のセリフに、仁が不思議そうに首をかしげる。
「何かの拍子に前世の記憶が戻ったのなら、それはそれとしてちゃんと受け入れられます。けれど私たちは“黒須春人”と“白川結乃”として出会って、夫婦になったんですから」
もはや、前世のことなど関係ない。
結乃は春人を心から信頼して、この先もずっと寄り添って生きていく覚悟を決めているのだ。
……だけど。
「でも……ブルースト殿の、言うように──」
先ほどからずっと、何かが喉の奥につかえているかのように息苦しい。
『たとえ記憶がなくとも……魂で、貴女を欲したんだろうな』
頭から離れない、あの言葉。
(もしかして……『春人さん』が、私を大事にしてくれるのは──……)
「ブラン──結乃さん? 大丈夫か?」
急に顔色を悪くして黙り込んでしまった結乃へ、仁が気遣わしげに声をかける。
うつむいていて見えにくい表情を覗こうと、肩に手を置きかけた瞬間。後頭部に勢いよく何かがぶつかり、ソファーに座る仁の身体が前につんのめる。