転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
 おそらく身長が170センチ近くはあるのだろうが、そこにハイヒールがプラスされてさらに背が高く見える。

 出るところは出て引っ込むべきところは引っ込んでいる、抜群のプロポーションだ。


(こんな美女、初めて見た……)


 なんだか、ものすごくいい匂いもする。未だ呆ける結乃の前に立つ彼女が、ふと何かに気づいて再度屈み込んだ。


「これもあなたの?」
「あ……っそうです、すみません!」


 女性が拾い上げてくれたのは、いつの間にか手から離れてしまっていたらしい花束だった。

 すぐに受け取って覗いてみると、やはり少ししおれてしまっている。しかしこのくらいなら、水につければ問題なく復活するだろう。

 両手で花を持ち、ほうとひとつ息をつく。
 そんな結乃を見つめる女性が、申し訳なさげにまた口を開く。


「ごめんなさい、弁償するわ。あそこの花屋で買ったのかしら?」
「え? いえいえ、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ! 家に帰って水につければちゃんと元気になりますから」
「そう……でも、あの男たちにぶつかられていたし、あなたの身体も心配だわ。念のため、病院にも──」


 どんどん話が大きくなってきた。結乃は慌てて口を挟む。


「本当に、平気ですから! どこも痛くありませんよ」
「ならせめて、名前と連絡先を教えてちょうだい。このまま別れるのは気が済まないわ」


 キッパリとした口調で言われ、言葉に詰まった。
 まあ、名前くらいなら……と、ようやく結乃は彼女の要望に応える。
< 143 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop