転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「えっと、黒須です。あのでも、ほんとに私は……」
「クロス……?」
続けようとした結乃のセリフを遮り、女性が声を漏らした。
なぜか彼女は大きな目を丸く見開いている。結乃が首をかしげたと同時に、また女性が唇を動かした。
「もしかしてあなた……黒須春人と、知り合いだったりするかしら?」
「えっ?」
今日初めて会った人物の口からよく知る名前が思いがけなく出たことに驚くが、ひとまずうなずく。
「あ……はい。妻、です」
自分で答えておきながら、その言葉の響きにちょっぴり照れてしまう。
するとなぜか眼前の女性は、わかりやすく訝しげに目を細めた。
「──妻?」
急に声色が変わったことにも驚き、結乃の脳内はまた疑問符でいっぱいになる。
「あの、何か……?」
「あ──いえ、ごめんなさい。あなたの旦那さまは、私の知ってる人じゃなかったみたい」
取り繕うように言ったかと思うと、女性がニッコリと美しい笑みを浮かべた。
「あの彼が、結婚なんてするはずないから」
「へ……」
呆気に取られる結乃の目の前で、彼女は持っていたクラッチバッグからカードケースを取り出す。
そうして中から1枚の紙を抜き取ると、結乃の手に押しつけた。
「これに私の番号とアドレスがあるわ。何かあったら遠慮せず連絡してね」
反射的に受け取ったそれは、名刺だ。女性は最後にもう1度結乃に完璧な笑顔を見せると、踵を返して行ってしまった。
呆然と立ち尽くしたまましばしその麗しい後ろ姿を見送り、手もとの名刺へと視線を落とす。
「……株式会社ウィザードネット・ジャパン、代表取締役……赤坂レイラ……?」
書かれている文字を小さな声でなぞってまた顔を上げた結乃の視界には、もう、先ほどまで一緒にいた絶世の美女の姿は見えない。
彼女の纏っていた甘い香りだけがこの場に留まり、ふわりと鼻腔をくすぐった。
「クロス……?」
続けようとした結乃のセリフを遮り、女性が声を漏らした。
なぜか彼女は大きな目を丸く見開いている。結乃が首をかしげたと同時に、また女性が唇を動かした。
「もしかしてあなた……黒須春人と、知り合いだったりするかしら?」
「えっ?」
今日初めて会った人物の口からよく知る名前が思いがけなく出たことに驚くが、ひとまずうなずく。
「あ……はい。妻、です」
自分で答えておきながら、その言葉の響きにちょっぴり照れてしまう。
するとなぜか眼前の女性は、わかりやすく訝しげに目を細めた。
「──妻?」
急に声色が変わったことにも驚き、結乃の脳内はまた疑問符でいっぱいになる。
「あの、何か……?」
「あ──いえ、ごめんなさい。あなたの旦那さまは、私の知ってる人じゃなかったみたい」
取り繕うように言ったかと思うと、女性がニッコリと美しい笑みを浮かべた。
「あの彼が、結婚なんてするはずないから」
「へ……」
呆気に取られる結乃の目の前で、彼女は持っていたクラッチバッグからカードケースを取り出す。
そうして中から1枚の紙を抜き取ると、結乃の手に押しつけた。
「これに私の番号とアドレスがあるわ。何かあったら遠慮せず連絡してね」
反射的に受け取ったそれは、名刺だ。女性は最後にもう1度結乃に完璧な笑顔を見せると、踵を返して行ってしまった。
呆然と立ち尽くしたまましばしその麗しい後ろ姿を見送り、手もとの名刺へと視線を落とす。
「……株式会社ウィザードネット・ジャパン、代表取締役……赤坂レイラ……?」
書かれている文字を小さな声でなぞってまた顔を上げた結乃の視界には、もう、先ほどまで一緒にいた絶世の美女の姿は見えない。
彼女の纏っていた甘い香りだけがこの場に留まり、ふわりと鼻腔をくすぐった。