転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
その日の夜。ダイニングチェアに腰かける結乃は、テーブルに頬杖をついてぼんやりとしていた。
目の前にある花瓶に生けた花を眺め、今日何度目かとわからないため息を吐く。
そうしておもむろに、テーブル上の傍らに置いた手帳型のスマホカバーを開いた。左側にあるカードケース部分から取り出したのは、夕方出会った美女から受け取った名刺である。
(赤坂レイラさん……あの人は、春人さんの知り合いなのかな)
彼女は否定していたが、『黒須春人』と同姓同名なんてそうそういるわけではないだろう。
あれから、名刺にあった『株式会社ウィザードネット・ジャパン』のことを少し調べてみた。アメリカに本社を構える新進気鋭のIT企業『株式会社ウィザードネット』を親会社に持ち、日本には最近進出してきたらしい。そこで社長という立場を任される彼女は、相当優秀な人物のはずだ。
美しさだけじゃない。そんな才色兼備の女性が、春人の知り合いにいる。そう考えると胸の奥になんとも言えないモヤモヤとした感情がわき起こって、結乃を落ち込ませた。
『あの彼が、結婚なんてするはずないから』
なんだかずいぶんと、親密そうな口ぶりだった彼女。
春人に夕方あった話をしてこの名刺を見せて、事実を直接確かめればいい。
だけど、できなかった。本当に彼女が春人の知り合いで、それも、考えた通りにとても親しい間柄だったとしたら……そのとき彼の前で平静を装える自信が、まったくないのだ。
自分でも、気づいている。胸にくすぶるこの気持ちの正体が、いわゆるヤキモチ──嫉妬、だと。
仕方のないことだとわかっているのに、春人の近いところに自分以外の女性がいると思うと心がざわつく。
目の前にある花瓶に生けた花を眺め、今日何度目かとわからないため息を吐く。
そうしておもむろに、テーブル上の傍らに置いた手帳型のスマホカバーを開いた。左側にあるカードケース部分から取り出したのは、夕方出会った美女から受け取った名刺である。
(赤坂レイラさん……あの人は、春人さんの知り合いなのかな)
彼女は否定していたが、『黒須春人』と同姓同名なんてそうそういるわけではないだろう。
あれから、名刺にあった『株式会社ウィザードネット・ジャパン』のことを少し調べてみた。アメリカに本社を構える新進気鋭のIT企業『株式会社ウィザードネット』を親会社に持ち、日本には最近進出してきたらしい。そこで社長という立場を任される彼女は、相当優秀な人物のはずだ。
美しさだけじゃない。そんな才色兼備の女性が、春人の知り合いにいる。そう考えると胸の奥になんとも言えないモヤモヤとした感情がわき起こって、結乃を落ち込ませた。
『あの彼が、結婚なんてするはずないから』
なんだかずいぶんと、親密そうな口ぶりだった彼女。
春人に夕方あった話をしてこの名刺を見せて、事実を直接確かめればいい。
だけど、できなかった。本当に彼女が春人の知り合いで、それも、考えた通りにとても親しい間柄だったとしたら……そのとき彼の前で平静を装える自信が、まったくないのだ。
自分でも、気づいている。胸にくすぶるこの気持ちの正体が、いわゆるヤキモチ──嫉妬、だと。
仕方のないことだとわかっているのに、春人の近いところに自分以外の女性がいると思うと心がざわつく。