転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
7:転生夫婦の新婚事情
それを確認したのは、1日の業務を終えて帰り支度を始めようというときだった。
【今日は仁と飲んで帰る】
差出人は夫である春人だ。スマホのSNSアプリに届いたメッセージを読み、結乃は目を丸くする。
入籍から、早2ヶ月以上。仕事の都合で時間の違いはあれど、いつもまっすぐ帰宅する彼がこうして飲みの約束の連絡してくるのは初めてのことで。
絵文字もスタンプもない素っ気ない文面で【帰りの時間が不明なので夕飯は用意しなくていい】旨を伝えてきた彼に【了解です】の文字が入ったゆるいクマのイラストのスタンプを返し、結乃はほうと息をつく。
世間一般的な夫婦はどうなのかはわからないが、結乃自身は夫が息抜きとしてたまに飲み会や趣味に関することなどで出かけるときは快く送り出してあげたいと思っているし、実際春人にもそう伝えてあった。
が、入籍してすぐの頃にしたとある悲しい会話(ふとした流れで「私に気を遣わないでもう少し飲み会に行ったりしていいんですよ?」と話した際、春人に「頻繁に飲みに行くような友人がいない」と返され「(地雷踏み抜いた……?!)」と無駄に冷や汗をかいたが本人はまったく気にしていなさそうだった)から、こんなふうに春人から連絡をもらうことはまだしばらくなさそうだと思っていたのに……なんとなく、じーんとしてしまう。
「黒須先生、もしかして旦那さんからですか?」
そんなふうに声をかけてきたのは、キャスター付きのオフィスチェアに座る結乃の後ろを通りかかったひとつ年上の男性教師だった。
さわやかな好青年、といった風貌の彼は4年生の担任をしており、結乃には普段からこうして気さくに話しかけてくれる。ここが職員室だということを思い出した結乃は、若干恥ずかしくなりつつ椅子ごと彼を振り返った。