転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
「ふぅ……」
6月に入って、空気に湿り気を帯びた日が多くなってきた。コツコツとパンプスを鳴らしてネオンの眩しい繁華街をゆっくり歩きながら、自然と吐息がこぼれる。
親しい同僚たちとの酒の席は、素直に楽しかった。
だけど、どうしても──大好きな彼と暮らすあの家に帰りたいと、思ってしまうのだ。
(【帰りは何時になりそうですか?】って、送ってみようかな。せっかく楽しんでるのにうっとうしいって、思われちゃうかな……)
未だ音沙汰のないスマホを片手に、そんなどうしようもないことを考える。
とっくに入籍を済ませた夫婦が、聞いて呆れる。相手に拒絶されることがこわくて、帰宅時間ひとつ気軽に訊ねることができない。
自身が春人に向けて抱いている感情を自覚してから、今日でちょうど1週間。結乃はこれまで以上に、彼との距離感を測りかねて悶々とすることが多くなっていた。
(結局、赤坂さんのことも聞けていないし……)
再び結乃がため息をついたところで、背後から「黒須先生っ!」と自分を呼ぶ声が届く。
反射的に足を止めて振り返れば、先ほど別れたはずの清水がこちらに駆け寄って来るところだった。
「清水先生?」
「俺も帰ることにしたんで、駅まで一緒に行きましょう! 女性ひとりだと危ないですし」
目の前で立ち止まった清水は、そう言っていつもの人好きのする笑顔を見せる。
特に深く考えるでもなく、その言葉にうなずいた。
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「はい!」
ニコニコ、笑みを絶やさない同僚につられるように結乃も口もとを緩め、並んで歩き出す。
普段から何かと話を振ってくれる彼だが、今は特に口数が多い気がする。きっと、アルコールが気分を高めて饒舌にさせているのだろう。
6月に入って、空気に湿り気を帯びた日が多くなってきた。コツコツとパンプスを鳴らしてネオンの眩しい繁華街をゆっくり歩きながら、自然と吐息がこぼれる。
親しい同僚たちとの酒の席は、素直に楽しかった。
だけど、どうしても──大好きな彼と暮らすあの家に帰りたいと、思ってしまうのだ。
(【帰りは何時になりそうですか?】って、送ってみようかな。せっかく楽しんでるのにうっとうしいって、思われちゃうかな……)
未だ音沙汰のないスマホを片手に、そんなどうしようもないことを考える。
とっくに入籍を済ませた夫婦が、聞いて呆れる。相手に拒絶されることがこわくて、帰宅時間ひとつ気軽に訊ねることができない。
自身が春人に向けて抱いている感情を自覚してから、今日でちょうど1週間。結乃はこれまで以上に、彼との距離感を測りかねて悶々とすることが多くなっていた。
(結局、赤坂さんのことも聞けていないし……)
再び結乃がため息をついたところで、背後から「黒須先生っ!」と自分を呼ぶ声が届く。
反射的に足を止めて振り返れば、先ほど別れたはずの清水がこちらに駆け寄って来るところだった。
「清水先生?」
「俺も帰ることにしたんで、駅まで一緒に行きましょう! 女性ひとりだと危ないですし」
目の前で立ち止まった清水は、そう言っていつもの人好きのする笑顔を見せる。
特に深く考えるでもなく、その言葉にうなずいた。
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「はい!」
ニコニコ、笑みを絶やさない同僚につられるように結乃も口もとを緩め、並んで歩き出す。
普段から何かと話を振ってくれる彼だが、今は特に口数が多い気がする。きっと、アルコールが気分を高めて饒舌にさせているのだろう。