転生夫婦の新婚事情 ~前世の幼なじみが、今世で旦那さまになりました~
──また、あの闇の中にいた。
ここに来るのは久しぶりだな、と悠長なことを考えて、けれども今回はこれまでとは明らかに違っているとすぐに気づく。
毎日のようにこの夢をみていた頃、目の前にあったのはひとりの女性の後ろ姿だった。
だけど、今は違う。春人の視線の先にいるのは、いつもの女性ではなく──どこかファンタジー的な要素のある白い服に身を包んだ、若い男だ。
相手とは2メートルほどの距離があり、なおかつ周囲は暗闇に包まれているというのに、男の淡い色の瞳や後ろでひとつに結わえた青みがかった長い銀髪、腰に差してある剣や白い服の装飾にいたるまで、やけにハッキリと視認できた。
しかもその男は、こちらと向き合う形でまっすぐに春人を見据えている。ただ黙って自分を射抜くその眼差しになぜか焦燥感を覚え、思わず口を開いていた。
「誰なんだ、おまえは」
そうして、驚く。これまでみてきた夢では、春人がいくら言葉を発しようとしてもこの喉から声が出ることがなかったからだ。
なのに今は、ごく自然に話すことができた。思わずそのまま固まっていた春人を静かに見据えたまま、目の前の男はゆっくりとまばたきをしたのち唇を動かす。
届いた声は音として耳に伝わったというより、頭の中に直接響くような不思議なものだった。
《わからないか。俺はおまえで、おまえは俺だ》
「は……」
返ってきたセリフに、改めてまじまじと相手の容姿を観察する。
そこでようやく春人は気づいた。男は髪や瞳の色、服装や髪型が風変わりなだけで──顔立ちや背格好は、まさに自分そのものだということに。
ここに来るのは久しぶりだな、と悠長なことを考えて、けれども今回はこれまでとは明らかに違っているとすぐに気づく。
毎日のようにこの夢をみていた頃、目の前にあったのはひとりの女性の後ろ姿だった。
だけど、今は違う。春人の視線の先にいるのは、いつもの女性ではなく──どこかファンタジー的な要素のある白い服に身を包んだ、若い男だ。
相手とは2メートルほどの距離があり、なおかつ周囲は暗闇に包まれているというのに、男の淡い色の瞳や後ろでひとつに結わえた青みがかった長い銀髪、腰に差してある剣や白い服の装飾にいたるまで、やけにハッキリと視認できた。
しかもその男は、こちらと向き合う形でまっすぐに春人を見据えている。ただ黙って自分を射抜くその眼差しになぜか焦燥感を覚え、思わず口を開いていた。
「誰なんだ、おまえは」
そうして、驚く。これまでみてきた夢では、春人がいくら言葉を発しようとしてもこの喉から声が出ることがなかったからだ。
なのに今は、ごく自然に話すことができた。思わずそのまま固まっていた春人を静かに見据えたまま、目の前の男はゆっくりとまばたきをしたのち唇を動かす。
届いた声は音として耳に伝わったというより、頭の中に直接響くような不思議なものだった。
《わからないか。俺はおまえで、おまえは俺だ》
「は……」
返ってきたセリフに、改めてまじまじと相手の容姿を観察する。
そこでようやく春人は気づいた。男は髪や瞳の色、服装や髪型が風変わりなだけで──顔立ちや背格好は、まさに自分そのものだということに。